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ブローカーのおばさんに案内されたのは、元ホテルだった古くて大きいアパート。ひいき目で見れば、味のあるクラシックな建築と言えよう。24時間ドアマン付きで、地下にはランドリー。まっ隣の建物は、なんと、かのヘミングウェイの定宿でもあり、セックスピストルズのシド&ナンシー事件でも有名なチェルシーホテルだ。1・9番の地下鉄の駅にも歩いて20秒。ロケーションとしては申し分ない。
「ハイ、ココネ」とドアが開き、姿を現した15階の部屋は、ステュディオと呼ばれるかなりせま〜いワンルーム。日本式に言うと13帖ほどの広さに、ままごとのようなキッチンとバス・トイレが付いている。「家賃ハ1450ドル。コノ場所でコノ値段ナラ安イヨ。ココ人気アルカラ今スグ決メナイト他ノ人ニ決マッチャウネ」この狭さで1450ドル!たら〜っと冷や汗をかきながら振り返ると、本当だ。ドアの向こうで別の不動産屋に連れられたお客さんらしき金髪のお兄さんが立っている。“1450、1450”と頭の中で数字が渦巻き、計算を始める。私が渡米した'98年はUSドル全盛期。1ドル140円前後していた。「20万円もするやんかー!」“無理ムリ!”とささやく理性と“まぁ仕事あるし、がんばって働きゃなんとかなるかぁ”と出たとこ勝負のいいかげんな性格が一瞬のうちにバトルして、いいかげんが勝った。「ココ、借リタイデス」と、ビビったあまり中国語なまりの日本語で答え、3日後には2年間リースの契約完了。その日から私のNY暮らしの半分以上を、この小さな小さなお城が支えてくれることになる。
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