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2011年09月29日
イサカイ女達

寒い冬の早朝、祖母の起きた後の暖まった布団で、
うつらうつらと一人寝ていると、
台所方向からオンナ2人の甲高い悲鳴。
と同時にその2人が
泣き叫びながらワタクシが寝ていた居間に
なだれ込んで来ました。
薄目を開けて見ると、
まず先頭が祖母、
それを追いかけるように母が祖母の背中にすがるよう追いかけ、
何やら泣きじゃくりながらあやまっている様子。
その後ろには祖父と父が呆然と立ちすくんでいました。
幼稚園に通ってたの頃の、年の暮れの衝撃の記憶です。
何があったのかワタクシには分かりません。
四人の朝食中に何か
とんでもない事態が起こったのは確かです。
2つ上の兄はその朝食の場で
祖父の隣に座っていたらしいのですが、
後年なってからの彼の曖昧な記憶による証言では、
母の方向から祖母に目掛けて、
突然お箸が飛んだらしい…
ワタクシの掴んでいる情報はそれだけ。
なぜ箸が宙を舞ったのか
それまでにどんないざこざあったのか、
今もって知る由ありません。
ともかくこの日の朝を境に、
10数年にわたる嫁姑の壮絶なるバトルの火蓋が
切り落とされたのでございます。
それ以降、
別居するまで祖母と母が話をしたところは
一度も見たことがありません。
廊下をすれ違っても、
お互い目線をずらし一瞥すらしません。
まるで、
そこにお互いが存在しないようなすれ違いぶりで、
それはそれは
見事な無視っぷりでございました。
ですのでバトルと言っても、あの朝以来、
口論や小競り合いになったとかと
具体的に何かが起こったわけではありません。
ただひたすら
沈黙の戦い。
ふつふつと湧き上がるやり場のない
情念だけの冷たいバトルでした。
夕食も当然みなバラバラで、
その順序も厳格に守られてました。
会社の付き合いや接待のある父が
まず一番最初で夕方早い目の食事を一人で軽く取ります。
今になって思うに、
接待というのは表向きかつ言い訳で、
おそらくあの
息のつまりそうな家から
一刻も早く外出したかったのでしょう。
父の次は祖父母が、そして母、
最後に家事を一切を仕切ってたお手伝いさん
という4時限コースで区切られていたのです。
ですので、
夕方1時限目始まる夕食スタートは
延々5時間にも及び、
4時限目終了は10時をまわります。
我々兄弟は2時限目以降に適当に誰かと食べていました。
兄は母と食べることが多かったようでしたが、
ワタクシは祖父母やお手伝いさんと食べることが多かったです。
この4時間割りコースを引き起こした張本人である母は、
食事の時もジリジリと
追い詰められているような雰囲気を醸し出し、
それを察知していたワタクシは、
その空気に堪えられず、
母と一緒の食事をあえて避けていました。
このような具合でしたから、
一家全員揃っての食事は
決してあり得ませんでした。
たとえ、
めでたき元旦の祝い膳の時でも、
母の膳と祝い箸だけがポツンとあり、
その前は
空の座布団だけ。
(この辺りは非常に興味深い話があるのですが、
また機会をみてエッセイにしたいと思っています。)
さて、
毎日毎日がこのような閉塞感に満ちた息苦しい家庭で、
さぞやつらい幼年期であったかと想像なさっていることでしょうが、
さにあらん。
結構楽しいものでございました!
だって、
オンナのイサカイって、
どこか滑稽で面白いですもの。フフッ…!
必死で戦っていても、
そのもがき苦しんでいる姿は
何だか笑ってしまうくらい哀れで滑稽。
「大奥」も「源氏物語」も「紀の川」も「香華」も
悲壮感が漂えば漂うほど、滑稽さも増します。
オトコの戦いのように、
領地の奪い合いの大義名分のもとに殺戮もいとわない、
なぁんてことはあり得ません。
政財界の裏の世界のように末代まで禍根を残すような根深さもない。
嫁姑のイサカイの大義名分なんて、
夫と子供の取り合い、
あるいは冷蔵庫の中の領地奪い合い程度が引き金で、
命にかかわるものではありません。
たわいもない部分に執念を燃やし、
燃え尽きることなくあっけなく戦いは終えます。
十数年経って、祖母が亡くなった葬儀の日、
出棺の時に真っ先に
棺桶にすがって泣きじゃくったのが我が母。
この光景ってあの日の朝と全く同じゃないですか
で!デジャヴ~!
祖母が棺桶に変身しただけのことで何の変わりもありません。
祖母の死と母の棺桶への謝罪でチャン、チャン。
すべてが終了っ。
あの十数年に及ぶ戦いってなんだったんだろう…
葬儀の時高校生だったワタクシは、
その滑稽さに笑いをこらえるのが必死でございました。
イサカイ女逹の光景は、
実に愉快極まりないもので人畜無害。
どうせオトコ共は蚊帳の外。
高みの見物といたしましょう。
投稿者 tadashi : 2011年09月29日 12:50
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