2005年08月08日
こだわり貧乏


この仕事も長くしていると、雑誌等の取材で、
メイク道具を拝見したいという依頼がよくあります。
プロが使う道具は一般では手に入らない、
さぞやすごい特殊な化粧品を使っているであろうと
期待を持って取材にいらっしゃるのですが、さにあらん、
意に反して当方メイクボックスの中味のほとんどが市販で買えるもの。
コンビニでウン百円で売っているものからブランド化粧品まで
誰でも彼でもそこいらで買うことのできるものばかりでございます。
数こそ多いのですが、要するに車内メイクのオンナよりはチョットはマシ、
コスメフリークのオンナよりチョット劣る程度のレベル内容でございます。
そんなごくフツーの化粧品を見て、期待を裏切られたような情けない表情で、
「あらー、意外とこだわってないんですねえ…」
と取材の方。
「はい、こだわってません」
と答える私くし。
押し殺したその表情からもこれでは取材にならんワというのが分かります。
仕方なしにメイクブラシに目をやられると、そこにはケースぎっしりの
ブラシ30本以上。しかも素材は灰リス、カナダリス、コリンスキーと
一般では入手しずらいプロっぽいものばかり。
取材の人も安心したのか声がオクターブ上がり、
「ワァ−すごい、すごい!やはりブラシにはこだわるんですねー」
と。
「「いいえ、こだわってません。」
「だって、こんな高いブラシばかり使って…こだわってらっしゃるじゃないですかあ…」
「いいえ、こだわってません!」
「でも…」
「いいえ、こだわりなんか持ってません!」
と、こちらも意地となって答えます。
要するに、私くしは、この「こだわる」という意味がイヤなのです。
当節、流行りのようにちょっと誉めたり、ちょっと自慢したりに都合良く便利よく
用いられる「こだわり」という言葉。
ああ!なんと貧乏たらしい響きでございましょうか。
辞書でひくと−小さなことにとらわれること−とあります。
ああ!なんと粗末な意味合いでありましょうか。
小さなことにとらわれるという事は、裏を返せば、
大きなことを見落とすという事でもあるのです。
ここを忘れないでいただきとうございます。
決して誉められた言葉ではございません。
決して自慢する言葉ではございません。
些細な部分だけに力を注ぎ満足すると、肝心の目的を見失ってしまいます。
道具ばかりにとらわれ、凝ってしまうと
肝心の美しくすることを見失ってしまいます。
プロとして、ブラシを吟味するなんて、ごくあたり前のこと。当然です。
特別なことでも何でもございません。
レストランに行って、もしシェフが
「当店は食材にもこだわっております。お皿や器にもこだわっております。」
と自慢げに言ったなら、その店はおいしいものをお客に食べさせ幸せになって
帰っていただきたいという料理人としての基本理念を見失い、
料理の過程のみにとらわれている、自己本意の貧しいレストランでございます。
お金を取って、人に料理を食べさすのに、食材や器、インテリア、花、サービス、
すべてにおいて吟味するのは、ごくごくごく当然のこと。
自ら取り立てて言うことではないのです。
「こだわりの店」は本当にまずい。
ワタシ、基礎化粧品だけにはこだわってるのよ、と言うオンナは、間違いなく
化粧下手の自己防御の強い神経質なだけのブスオンナでございます。
メイクでも小さな毛穴やマスカラ角度ばかりにこだわると、
顔から豊かさ、大らかさ、ゴージャスさが失われます。
「こだわり」は心も体もすべて貧しくさせてしまうのであります。
こだわりをゴクンと飲み込む力…それが本当の美しさ、
本当のすばらしさを創り出すことができるのです。
投稿者 tadashi : 2005年08月08日 15:37
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コメント
エレガンスの伝道師さま
はじめまして。
いつも楽しく、そして真剣に拝読させていただいております。
当方、もうすぐ34歳になります未婚女性です。
「こだわり貧乏」のお話、脳みそを、
バズーカ砲で打ち抜かれたような衝撃でした。
これからも、人として、オンナとして精進して参りたいと思います。
投稿者 るみるみ : 2005年08月08日 21:41


