| この秋もお薦めしたい面白作品は沢山あるけれど、連載まる一年目を締めくくる今回は、
あの『トレインスポッティング』で、イギリス映画の一大ブームを巻き起こし、
ユアン・マクレガーを一躍スターにのし上げたあのダニ−・ボイル監督が、
その後ハリウッドに渡り、『普通じゃない』『ザ・ビーチ』などを発表するも、
その評価はいまいちぱっとせず、どうなっちゃうのかな〜なんて思っていたら、
今回は、汚名返上とばかりに『ザ・ビーチ』の原作者アレックス・ガーランドと
再びタッグを組み、とんでもなく面白い作品を御紹介!
本国イギリスのロンドンでは、初登場第No.1の大ヒットを記録。
これって、ホラー?それともSF?いや戦争映画?何、なに?
って感じの新しいジャンルで、あえて言うなら、その全ての要素がちりばめられた、
希望に満ちた人類滅亡映画かな。
なんで人類滅亡映画に希望があるの?とお叱りをうけるのは覚悟で、
やっぱりそう言うしかないのです。
物語は、怒りの衝動を押さえる特効薬を開発しようとする動物実験が失敗し、
見るもの全てを殺したくなってしまうウィルスが研究所から漏れてしまった
「28日後」からスタートします。
ある時ふと病院で目覚めた主人公ジムは、荒廃し、誰もいなくなった病院から
事の真相を確かめたくて、訳のわからないまま外へと足を運びます。
街に出てみたものの、人っ子一人影はなく、「Hello!!!」と叫ぶ声も空しく響きます。
通り慣れた広場には、9.11後のN.Yのように家族の行方を探すビラが貼られ…。
戦争でも起きたというのか?いったいこの街になにが?捨て去られた新聞をたよりに、
とにかく事の次第を究明したいジム、しかし誰も、何も答えてくれません。
そしてやっと辿り着いた教会で再び「Hello! 誰かいないか?」と叫んでみる。
すると返ってきた答えは、目を血走らせ、髪は乱れ、唇から血をひたたらせて襲いかかってくる、
神父とウィルス感染者達。(この辺は、バイオハザード気分で超怖いです!)
防毒マスクをした何人かに誘導され、とにかく必死に逃げるジム。
どうやらこのウィルスは血液を媒介として感染し、数秒で人間の知性も理性も破壊し、
殺人鬼に変えてしまう恐ろしいもの、感染してしまえば、親でも兄弟でも、恋人でも
殺してしまうしか方法はない、文字どおり人類史上最大の恐怖のウィルスだったのです。
それでもたった3人の仲間を得たジムは、特効薬を見つけるための旅に出ます。
その先にどんな更なる恐怖が待ち受けていようとも…。
ま、ここまで読んだ所では、やっぱホラーなんだ〜って思った貴方!それは間違いです。
これは、人類の再起、存命をかけたサバイバルムービーなのです。

極限状態の恐怖と孤独のなかで、人はどう判断し、どういう決断を下すのか?
絶望的な状況において、人はどうやって希望を持ち続けられるのか?
人は独りでは生きて行けない、そこに必要なのはコミュニケーション。
果たしてジムの「Hello!」は届くのか!?
いや〜本当に面白かったです。
はらはらドキドキ、手に汗握り、また時には悲しみにうちひしがれ、そして恐怖におののき、
しかし決してスクリーンから目が離せない。ほんのわずかな希望を胸に、最後まで見守らずには
いられません。いや〜やっぱりダニー・ボイルは天才です。
こんなにも面白い作品をみせてくれたのだから、ちょっとくらい時間がかかっても
しょうがないか、いや待ったよ!、そして待った甲斐があったよ!って(ちと偉そうですが)
心底御本人に伝えたい、そう思う藤田であります。
先のイラク戦争では、大量破壊兵器の科学物質があるのではと各国が調査をすすめ、
その一方では、これまでに発見されていない強いウィルス、サ−ズの出現と、環境破壊、時代の
荒廃とともに恐怖の要因は膨らむばかり、人々は簡単に「切」れてしまうし、世の中いったい
どうなるの?不安な社会情勢は世界的、そんな今、こんな作品がまたまたイギリスから登場しました。
あまりにもタイムリーで、そこにはリアリティさえ感じます。
しかしそんな時代、そんな状況だからこそ、どう生き抜くのかをこの映画は教えてくれます。
出演陣は、本国イギリスではそこそこのキャリアをつんではいるけれど、
それほど有名ではない俳優達が登場します。だからこそリアリティがあるのです。
主人公ジムを演じるキリアン・マーフィーは線の細い、どことなく頼りなげな雰囲気を持っています。
そう、この映画にヒーローはいらないのです。(でもきっと彼はこれから人気者になるでしょう!)
唯一カリスマチックに存在しているのは、ヘンリー少佐役のクリストファー・エクルストン
くらいでしょうか。しかしこの役はある種象徴的であるからこそ、彼が適任と言えるでしょう。
その辺りは、全て監督であるダニ−・ボイルの計算通りの大成功。
この映画には、いろんなメッセージと、数々の伏線がしかれています。
色使い一つとってみても、それらには全て意味があるのです。
ちょっとドッキリ系は苦手という方なら、便りになるお友達の腕にしがみついて観るもよし、
手で目を被いつつも頑張って最後まで観て下さい。
妙に恐怖をそそるようなおどろおどろしい音じゃなく、音楽だって、最高におしゃれ!
『28日後』に好御期待!☆☆☆☆
2003年08月23日より公開
公開劇場 シネクイント ほか
スタッフ 監督:ダニー・ボイル/製作:アンドリュー・マクドナルドほか
キャスト キリアン・マーフィ/ナオミ・ハリス/クリストファー・エクルストンほか
03.08.30
|