京都という街は、気候のいい春や秋には地面から観光客が生えてくると聞くけど、そのとおり。ここ祇園の花見小路もその例にもれず、 平日だというのに四条通りから花見小路に入ったあたりは、けっこうわんさか人がいたりする。それでも、そこからちょっと西に入ると、静けさが「祇園どす〜」な感じで戻ってくる。ここが「フィリップ・オブロン」。今日は飲食業界関係者の男友達が久しぶりに関西に来たので、むりやりワタクシの誕生日のお祝いをかね、行ってみようということになったのよ。店の前に来ると、白い麻ののれんと、その前に出ている手書きのようなフランス語のメニューがマッチしていて美しい。ここも最近ではよくある町家改造系だけど、祇園の中でもけっこう早めに存在感を示していたと記憶しているわ。
のれんをくぐると、クリーム系の壁やドア。中に入ると「いらっしゃいませ。ようこそ」とショートカットの若い女性が出てきて、前室のような小ちゃなラウンジ・バーに通される。きれいな赤の椅子がおいてある、とてもこじんまりした空間で、これがまたとても居心地がいいのよ〜。待っている間にひょこっと顔を出したのはシェフのムッシュ・オブロンご本人。口ひげをたくわえたなかなかのハンサムで、にこっと笑って「こんニチワ。きょうはアッタカイね。」と、まさにパーティ客を出迎えた家の主のごとく挨拶してくれる。うーん、いいわねー。このムード。しばらくして通されたのは1階の奥で、定員は約12人くらいという感じ。2階はもう少し広くとってあるそうだけど、思っていたより小さいお店だわ。
でも、入ったときから本当に居心地よく感じる。何て言うのかしら、ひそやかで優しい感じがするレストランよ。「あでやか」よりは「たおやか」、「贅沢」というよりは「上質」・・・という気分。
さて、当然のことながらグラスシャンパンを頼んで、乾杯。さすがフランス人が仕切っているレストラン、食前酒や食後酒の類も、数こそ多くはないけれど、何となく心憎い品揃えだわ。早くも食後酒に思いをはせつつ、お食事のメニューを見て、不覚にもびっくり。
→→→ メニューに値段が書いていない。
これは、その昔女性やゲストには必ず渡されていた「ノープライス・メニュー」。最近はどこもカジュアル化しているし、男女平等だし、特にワタクシは食事中仕切りまくっているせいか、このようなメニューはどこに行っても渡されることはない。最近その存在すら忘れていたというのに・・・。「ああ、クラシック・・・♪」ワタクシはほうっとため息をもらしてしまったわ。使っている食器はデザイン性が強いガラス器が多くて、色のコントラストはけっこう強いし、むしろモダンな感じなのだけど、不思議・・・。
メニューはコースが中心で3種類ほど。(あとで聞いたところによると、6,000円・10,000円・15,000円だそうよ。)アラ・カルトもあるけれど、小さい店のせいかそれぼど種類はなかったわ。結局10,000円のコースを選ぶ。ここのお料理はどちらかといえば南フランスの香りが高いそうなので、ワインも南フランスのものをお願いしたわ。ワインを選んでくれた男友達がいうには、ワインの値段は「比較的リーズナブル」とのことで、下は4,000円くらいからあるらしいわ。
さて、楽しくコースがスタート。アミューズのトマトのムースでお口さわやか。前菜は兎肉の煮込んだ感じのものとフォアグラなどをゼリーで寄せたもの、次はアスパラガスのスープにふんわりしたクリームをあわせてあって、かぼちゃとトリュフのリゾットが続き、メインは手長エビや豚足などの軽い煮込みをカネロニ仕立てにしたものだったわ。・・・こうやって、さらりと書いたのは、本当にさらりとしていたから。専門の男友達に言わせると「料理の手法的には非常にクラシックだから重厚な味になるはずなのに、味わいはフレッシュだよね。量が少ないのは日本人に気を使っているのかな」だそうよ。食感はあくまで軽く、量もそんなにないので、そのあとコースにあるチーズ(好きなものが3種類選べるの♪)とデザートをいただいても、体がかるーい感じ。
サービスはときおりぎごちないとこも見えたけど、全体的にはいい感じだったわ。1階のキッチンから2階へ料理を運んでいるらしい階段のドタバタ音は、むしろほほえましい賑やかさと言えるのでまあOK。ワタクシ達が食後のコーヒーなどいただいているときに、またシェフがテーブルにいらして「どウ?」なんて聞いてきておしゃべりできたりするのも、こういう小型レストランのいいところだし。
そして、お支払は二人で約32,000円。一人約16,000円は安くはないけど、この雰囲気であれば高くはないと思ったワタクシ。あとでラーメンも食べられそうなくらい軽い料理ではあったけど。(言っておくけど、決して食べてないわよ。) あ、それから、ランチもやっていて、コースが3,500円と6,000円ということよ。お試しになって。
ここは贅沢ではないけど、上質。前室やノープライスメニューも含めて、温かいクラシックさと新しさが同居するレストランよ。 |